各ページは(殆ど)スペイン語の「ケチュア語小文典」から翻訳したものです。
ケチュア語は文法的には膠着語であり、単語は語幹の末尾に接尾辞を付着したものです。
単語 | 意味 | 接辞 | 定義 |
---|---|---|---|
wasi | 「家」 | ||
wasicha | 「小家」 | -cha | 縮小 |
wasichayki | 「貴方の小家」 | -yki | 単数二人称所有 |
wasichaykichik | 「貴方達の小家」 | -ykichik | 複数二人称所有 |
wasichaykichikkuna | 「貴方達の小家々」 | -kuna | 複数 |
wasichaykichikkunapaq | 「貴方達の小家々の為」 | -paq | 与格 |
wasichaykichikkunapaqchá | 「貴方達の小家々の為かもしれない」 | -chá | かもしれない |
上例は名詞であるが、動詞にも同じ様に接辞を付着する事ができます。
単語 | 意味 | 接辞 | 定義 |
---|---|---|---|
qhaway | 「見る」 | -y | 不定詞 |
qhawapayay | 「見つめる」 | -paya | 反復 |
qhawapayachiy | 「見つめさせる」 | -chi | 因格 |
qhawapayachikuy | 「自分を見つめさせる」 | -ku | 再帰 |
qhawapayachikuchkay | 「自分を見つめさせている」 | -chka | 進行 |
qhawapayachikuchkan | 「彼は自分を見つめさせている」 | -n | 単数三人称 |
qhawapayachikuchkanku | 「彼らは自分を見つめさせている」 | -nku | 複数三人称 |
qhawapayanachikuchkanku | 「彼らはお互いを見つめさせている」 | -na | 互格 |
この様に、スペイン語や日本語で数多くの単語で表す思想を、接辞を付着した一つの単語で表せます。
ケチュア語は日本語と同じ様に、主語を文の先頭、述語を末尾に置くSOV型の言語です。英語やスペイン語の語順は普通SVO型です。
ñuqa | t'anta | -ta | -m | muna- | -ni |
私 | パン | を | 認識 | 欲する | 単一 |
ケチュア語では単数と複数の一人称、二人称、三人称を表す事ができます。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | ñuqa 「私」 |
ñuqanchik 「私達(包括的)」 |
ñuqayku "「私達(排他的)」 | ||
二人称 | qam 「貴方」 |
qamkuna 「貴方達」 |
三人称 | pay 「彼」 |
paykuna 「彼ら」 |
ケチュア語では複数一人称を示す人称代名詞は二つあります。包括的複数一人称「ñuqanchik」は「私と貴方」を示し、又は一人称と二人称両方含めた人称代名詞である。排他的複数一人称「ñuqayku」は「私達(貴方抜き)」を示す。例えばペルー人一人が他のペルー人に「私達はペルー人だ」と言うとしたら、「ñuqanchik piruwrunam」と言います。ここでエクアドル人が来るとしたら、ペルー人は同じ意味で彼に「ñuqayku piruwrunam」と言います。
英語とスペイン語と違い、ケチュア語の三人称では男性と女性の区別が付かない。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
近称 | kay 「この」・「これ」 |
kaykuna 「これら」 |
中称 | chay 「その」・「それ」 |
chaykuna 「それら」 |
遠称 | haqay 「あの」・「あれ」 |
haqaykuna 「あれら」 |
連体詞と使える指示詞は単数形のみ。(例)kay wasi, kay wasikuna 「この家、この家々」。名詞と同じく、接尾辞を付着する事ができます。
処格 -pi |
奪格 -manta |
比格 -hina | |
---|---|---|---|
近称 kay |
kaypi 「ここ」 |
kaymanta 「ここから」・「これから」 |
kayhina 「こんな」 |
中称 chay |
chaypi 「そこ」 |
chaymanta 「そこから」・「それから」 |
chayhina 「そんな」 |
遠称 haqay |
haqaypi 「あそこ」 |
haqaymanta 「あそこから」・「あれから」 |
haqayhina 「あんな」 |
ケチュア語の複数形は接尾辞「-kuna」で表す。
所有接辞で付着した名詞では、所有接辞の後に複数接辞が付く。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
単一 | wasiy 「私の家」 |
wasiykuna 「私の家々」 |
単二 | wasiyki 「貴方の家」 |
wasiykikuna 「貴方の家々」 |
単三 | wasin 「彼の家」 |
wasinkuna 「彼の家々」 |
包複一 | wasinchik 「私達の家」 |
wasinchikkuna 「私達の家々」 |
排複一 | wasiyku 「私達の家」 |
wasiykukuna 「私達の家々」 |
複二 | wasiykichik 「貴方達の家」 |
wasiykichikkuna 「貴方達の家々」 |
複三 | wasinku 「彼らの家」 |
wasinkukuna 「彼らの家々」 |
別の方法で複数形を表す時は「-kuna」を付着しません。
単数 | 単数 | achka 「沢山」 |
tawa 「四」 |
waranqa 「千」 |
---|---|---|---|---|
runa 「人」 |
runakuna 「人々」 |
achka runa 「沢山の人」 |
tawa runa 「四人」 |
waranqa runa 「千人」 |
allqu 「犬」 |
allqukuna 「犬達」 |
achka allqu 「沢山の犬」 |
tawa allqu 「犬四匹」 |
waranqa allqu 「犬千匹」 |
sach'a 「木」 |
sach'akuna 「木々」 |
achka sach'a 「沢山の木」 |
tawa sach'a 「木四本」 |
waranqa sach'a 「木千本」 |
上例の様に、どの名詞にでも所有接辞を付着する事ができます。所有者に念を押したい時は、属格接辞「-p/pa」を付着した人称代名詞を足します。
子音で終わる単語は、子音連結を発音しやすくする為に「-ni」を語幹と接辞の間に付着します。
接辞 | wasi 「家」 |
kuntur 「コンドル」 |
wasicha 「小家」 |
kunturcha 小コンドル | |
---|---|---|---|---|---|
ñuqap 「私の」 |
-y | wasiy | kunturniy | wasichay | kunturchay |
qampa 「貴方の」 |
-yki | wasiyki | kunturniyki | wasichayki | kunturchayki |
paypa 「彼の」 |
-n | wasin | kunturnin | wasichan | kunturchan |
ñuqanchikpa 「私達(包)の」 |
-nchik | wasinchik | kunturninchik | wasichanchik | kunturchanchik |
ñuqaykup 「私達(排)の」 |
-yku | wasiyku | kunturniyku | wasichayku | kunturchayku |
qamkunap 「貴方達の」 |
-ykichik | wasiykichik | kunturniykichik | wasichaykichik | kunturchaykichik |
paykunap 「彼らの」 |
-nku | wasinku | kunturninku | wasichanku | kunturchanku |
接辞: 無
主格は文の主語を示す。接辞は付きません。
日本語の「の」と約同じ意味。母音の後には「-p」、子音の後には「-pa」を付着します。
接辞: -pi 「に」・「で」
この接辞は場所を示す。
接辞: -ta 「を」・「に」・「が」
対格は目的語を示す。
接辞: -manta 「から」
奪格は場所、時間、物質などの元を示す。
接辞: -wan 「と」・「で」
具格は主語と共に動作を実行する道具、同伴などを示す。